会場全体が温かで優しい空気で満ちあふれた、そこにいる全ての人が一体となっているかのような、稀に見る素晴らしいライブだったと思います。 何しろお客さんたちが素晴らしい。絶妙なタイミングで喝采と歓声を捧げ、ステージを盛り上げます。客席から御大ボブ・ディランを支え、可能な限り最高のパフォーマンスをして貰おうという清々しい気構えを持ったファンが大勢いるように感じました。恐らく、どこでどう間の手を入れれば盛り上がるのかを熟知しているであろうコアなファンの方々が、あちらこちらで先導していたのでしょう。 ボブ・ディランもそんな客席の雰囲気に全力で答えようとしているようでした。ドスッと重く響く深い声で、丁寧に丁寧に言葉を紡いでいく。歌とも朗読とも言えぬ、往年の歌唱とは全く異なる老齢にしてこそ可能となったスタイル。声について「嗄れた(しわがれた)」という表現がありますが、顔のシワにその人の人生が刻まれているように、御大の声にもまた彼の人生が刻まれており、その偉大なる足跡が音となって会場中に降り注いでるかのようでもありました。 そして、カントリー, ウエストコースト・ロック を基調とし、時にスワンプし、時にジャージーに極上のアンサンブルを奏でるバンドの面々。時折、御大の顔を覗き込むように気にかけながら演奏している様子の微笑ましさ。そんなバンドメンバーたちのボブ・ディランに対する有り余る敬意と思いやりが表れているかのような温もりのあるサウンド。何とも言えず心地よく穏やかな気持ちにさせられました。勿論、それはPAのエンジニアリングが素晴らしかったということでもあるでしょう。バンドの音はやや控えめに、御大の声やハーモニカを盛大にフューチャーした音作りも絶妙でした。*ボブ・ディランはギターを弾かず、時々ピアノを弾いていました。音量は押さえ気味でしたが 笑。 些か観念的なレビューとなってしまいましたが、具体的なライブの内容については、菅野ヘッケル氏 によるライブレポートを読んでいただくのが一番でしょう。ボブ・ディランのライブを数えきれない程体験した氏をして「奇跡だ」と言わしめる場面がいくつもあったようです。 “ボブ・ディラン 2014年4月7日 Zepp DiverCity第6夜ライヴレポート by菅野ヘッケル” 私はボブ・ディランのライブを見るのは今回が初めてです。又、知らない曲の方が多いですし「ファンです!」と自信を持って言えるほど詳しくもなければ、何か深い思い入れがあるわけでもありません。故に、菅野ヘッケル氏が仰るところの「奇跡」には驚きもしなかったのですが、「今夜は最高の夜になった。」「今夜のコンサートは、記憶に残る一夜だった。」との評価については全面的にそのとおりだと申し上げたい。 今後、「今までで一番良かったライブは?」と聞かれたら、『2014年のボブ・ディラン!』と言うことになるでしょう。お世辞でも何でもなく、心からありがとうと思える本当に素晴らしいライブでした。 オススメの本↓
「グリニッチヴィレッジの青春」著:スージー・ロトロ, 翻訳:菅野 ヘッケル コメントはクローズされています。
|
Category
すべて
Archive
12 月 2020
|
4/10/2014